利回りの差はもはや消滅

2002年、『日経ビジネス』(2002年7月辺日号)という経済誌に「不動産大革命」という特集が掲載されました。私はとの特集のため、首都圏の主要駅別に「駅徒歩8分専有面積百2m」の新築分譲価格と賃料をもとに、駅別のマンション利回り(価格に対する年間賃料の割合)を算出しました。そして、利回りが高いところのマンション価格や地価が上がると予想したのです。この特集は大きな反響を呼び、その年の三大記事のひとつにも選ばれました。当時はまだバブル崩壊の影響が残っており、土地や不動産の価格は低迷。マンションを買っても値上がりは期待できず、「お買い得」なマンションを選ぶ客観的な基準がない状況でした。一方、日本の不動産が割安と判断した外資系ファンドなどが2000年頃から続々とやってきて、オフィスピルやマンションを買い始めていました。彼らの判断基準は、購入価格に対する賃料収入、すなわち「利回り」であり、利回りで不動産の価格を判断することを「収益還元法」といいます。そ乙で私は、マイホーム用のマンションについても、賃貸に出したときに得られる賃料をもとにした「収益還元法」が今後の主流になると考えたのです。こうして首都圏の主要駅別にマンション利回りを調べてみました。その結果、一番利回りが高かったのは地下鉄半蔵門線の水天宮前で9・95%。一番低かったのは西武多摩川線多磨駅の1.97%でした。マンションの賃料は基本的に都心のターミナルやオフィス街に近いほど高く、郊外ヘ行くにつれて安くなっていきます。一方、マンションの新築分譲価格は地価に連動するため、商業地や人気住宅地ほど高くなります。マンションの利回りは賃料と分譲価格のバランスで決まりますから、賃料が高く新築の分譲価格が安いところが有利なわけです。そのため、都心に近いものの住宅地としてはあまり認知されていないところほど利回りが高くなる傾向がありました。たとえば、山手線の目黒駅周辺は商業地域で地価が高く、新築分譲価格も高くなる分、利回りは低くなりました。一方、目黒駅から、たったひと駅離れた不動前駅になると、商業地が住宅地になって地価や新築分譲価格は大きく下がりますが、都心へのアクセスは数分しか変わらないため、賃料はそれほど下がりません。結果的に想定利回りが高くなっていました。こうした「収益還元法」による「儲かるマンション」の分析は当時まだ珍しかったのですが、その後次第に知られてくると、利回りが高い駅周辺のマンションはマイホームとしてはもちろん投資用の購入希望も増えてきて、取引価格はどんどん上がっていきました。数年もすると利回りはならされ、現在、首都圏ではどこでもあまり差がなくなっています。つまり、情報が流れることで、人々は行動を起こし、予測が的中したわけです。この本でも今後上がるエリアや、新しい「儲かるマンション」の見つけ方を書いています。したがって、この本も同じことを起こすかもしれません。